以前のエントリーで登場したSくんという若者がいる。
書くのが遅くなったが進展があったので書いていく。
↓経緯は↓
優秀な人材の引き抜きに動きだしたポンコツチームの舞台裏。 - るいブロ
私はSくんの引き抜きに向けて動いていた。
ただし、縁故採用などという恥ずかしい体にはしたくなかった。そこで彼にちょっと狭き門にチャレンジしてもらい、晴れてウチの職場へ派遣でも嘱託でもない正規雇用で来て欲しかったのだ。
Sくんにその話をしたのはお盆の最中。Aに協力してもらい、まんまとおびき出すことに成功した。
担当直入に切り出す。
私「ウチの正規職員として働いて欲しい」
戸惑っている。そうだろうな。
S「やりたいです。やらせてください」
おっ、決断はえー。ますますAとすげ替えたくなってきた。まあAも決断は早いのだが文句垂れるからな。
私は、「縁故採用などしない、自力で入職してほしい、そのための勉強は私とAとで見る、あくまで採用は人事部が決定することだから確実とは言えない、でもこの先どこでもやっていける技能やコツは責任を持って教える。」
などの条件を言った。
Sくんは頭のいい子だ。早速、
S「まず何をしたらいいですか?」
私「将来を決める大事なことだ。まずSくんにしてほしいことは、ご両親に報告と相談だ。いきなり話してもびっくりされると思う。ご両親がどう思われるかは分からないけれど、反対されるより賛成してくれるほうがお互いのためだ。」
S「わかりました。」
そしてSくん含む私たちはいつものごとくクズとなった。
さて数日後。Sくんがいつものように掃除をしてくれている。私のデスクに近寄ってきてメモを置いた。そのままSくんは静かに出ていった。
おい私のデスクのゴミは放置か!
まあいい。メモには「両親は反対はしてないんですけど心配らしいです。希望としてはまず大検とってから、企業に面接に行ってどこも就職先がなかったら…」てな内容が書かれていた。
そうか。ご両親の心配する気持ちは分かる。Sくんは先天性の障がいを持つ人間で、就活も一般枠では心折れかけている。
私はSくんを探してご両親に会わせてもらうよう頼んだ。早速その日の夜にSくんのお宅にお邪魔した。1人ではない。一応クズだが医師である主治医をなんとなくエキストラとして連れて行った。
一通り挨拶を済ませると、ご両親はSくんの障がいのこと、今まで苦労してきたこと、この先自分たちが逝った後のことなどを私に話した。気持ちは分かる。
私「ご両親が心配なさるのも当然です。でも、Sくんの障がいに過敏になってらっしゃいませんか?Sくんの障がいがこの先の選択肢を狭めているとお考えならそれは間違いです。Sくんがやりたいと願えばそれは選択肢になります。大検を取ってから最後の手段としての方法も選択肢のひとつだと思います。今、Sくんがそれを望むならそうしてもらっても構いません。Sくんが決めることだと思います。私たちは急ぎませんので、Sくんとよく納得いくまで話し合ってください」
みたいなことを見事な化け幅でご両親に伝えた。
ご両親はSくんの意思を確認し、後悔しないとの返事を聞いてから、お母様は泣きながら私に頭を下げ、「よろしくお願いします」と言ってくれた。
私はとりあえず今のバイトは続けながら、3ヶ月コースあたりの基礎的な職業訓練の申し込みを勧め、それを修了したら次のステップへ進む計画をご両親に話した。
ちなみに訓練校への紹介料などは一切発生しないし(ハローワーク経由なんで当たり前)、定員によってはSくんがバカなら落とされる可能性も大いにある。
何年後かには課長(昇進はないだろう)、私、A、Sくんでチームを組む日がくるかも知れない。
ちょっと嬉しい帰り道。
車に乗り込む。主治医が痺れた足をさすりながら、
主「なあ、俺要った?」
居ったんかい!置物と化していたこのエキストラは全然役に立たなかった。