医師会オケは「私の指の緊急処置が必要」だったことを除いて、特にこれといった問題もなく無事終了し、打ち上げも諸事情により辞退してさっさと帰ってきた。
高齢者や障がい者向けのチャリティ的なイベントだと聞いてはいたが、それにしては金をかけ過ぎだろ。
会場は2000人クラスで無料で開放。ケータリングはリーガロイヤルのロゴが輝くトレーに入れられ、エントランスには各医療機関からの花が続々届けられ、その花もお客さんへ小さい花束にアレンジしてお持ち帰りさせている。
私へのギャラに回してほしいものだ。
1曲目は私の出番はないので舞台袖で待機。
2曲目から私の出番だ。当たり前だが拍手。こっぱずかしい。やっぱり苦手だ。
今日のコンサートのコンセプトは
「誰もが一度は聞いたことのある耳慣れたクラシック」
という、なんとも面白味のないものだった。そんな企画は今までどこかのオケが腐るほどやっている。
なんとなく演奏中にいつも上の空になってしまい、苦手としているテンポではあるがわりとチャッチャと仕上げた2曲目はこれだ。
モーツァルト ピアノ協奏曲 第21番 から 第2楽章 - YouTube
2曲目が終わると私は5曲目まで出番がない。3曲目が30分ほどの曲で4曲目は10分ほどの曲だ。そのあと15分の休憩を挟むので、私は1時間ほど空き時間がある。
その間?誰も居ないのをいいことに、ケータリングを片っ端から食っていたよ。当たり前だろ。
5曲目は浅田真央ちゃんがフリーで使っていたよね。これだよ。
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第2番 第1楽章/Rachmaninov Piano Concerto No.2 - YouTube
重い。プログラム考えたやつは誰だ。だからクラシック離れしてくんだよ。
さて指揮者のつまんないMCを挟み、これまた寒い「お楽しみコーナー」
私はここでクラシックではない曲を2曲弾く。
6曲目は、私もあまりに懐かしくて練習中何度も泣きそうになったこれ。
さよなら銀河鉄道999の感動シーンでこれまたいい所に入ってくるんだよな。参考までに。
さよなら銀河鉄道999・・ 再会 LOVE THEME - YouTube
知らない方は1作目から一度観た方がいい。
そして「蠍火」がやってきた。指揮者はよく知らないクセにwikiかなんかで仕入れた能書きを垂れている。
beatmaniaIIDX ピアノ協奏曲第1番 '蠍火 - YouTube
以上でプログラムは終了なのだが、私はあと2曲ピアノソロを弾かなくてはならない。
Piano Etude(Demon Fire, 鬼火) by OSTER Project - YouTube
手を抜くつもりが抜けなかった。
最後はH ZETT MさんとまらしぃさんVerの「千本桜」を弾いた。プロの方たちなので問題起こったらアレなんでリンクだけ。
2台Piano「千本桜」 【H ZETT M×まらしぃ】 - YouTube
このアンコール最後の曲こそ実は今日のメインなのだ。
2台ピアノで私は11歳の女の子とコラボした。それぞれの譜面で練習し、今日を合わせて2回しか合わせていない。この子は天才だと思った。イヤモニもない空間で私の音を確実に聞き取り私に合わせてくれていた。ノリにノリまくった私たちは技術・正確さそっちのけで感情に任せたアドリブをバンバンブッ込んだ。
この千本桜は予想以上の仕上がりで、観客を魅了し、私たちは大絶賛を受け私は女の子の手を取り一緒に深々と頭を下げた。AKBのように長いやつね。舞台から満員の観客席を見るのは本当に気持ちいい。このまま死んでもいいかな。
そして私の指は壊れていた。紫色に腫れ上がり、自分の意思では動かせないくらい固まっていた。すぐ車に乗せられ病院へ連れて行かれた。
ああ、ケータリング食っておいて良かった。どうにかして残り持って帰りたいな。
なぜかそんなことを考えていたと思う。
主治医も付き添い、当直医師に私の既往歴データなどを伝える。へー、こーゆーときはコイツ使えるんだな。
いやいや、そんなことより私はギャラが気になって気になってそれどころじゃないのだ。貰いそびれるなんてことになったら、この医師会の悪口をネットで拡散してやる(地味)
処置を済ませホールに戻る。
指揮者が「お疲れさんです。はい、本日のギャラ」と言って、なんかA4サイズの封筒を渡してきた。デカくね?なんでA4?
重いけれど、ジャラジャラ鳴ってる。小銭も入ってる?
まさか、すでに所得税まで引かれているのか?
私「あ、ありがとうございます。ご迷惑をおかけしました。」
指「いいよ。よく頑張ってくれたね。ピアノのツンデレちゃんにみんなからね」
私「みんな?」
指「オケみんなと関係者で、今日のピアノのツンデレちゃんの報酬集めた。いくら入ってるのかは僕たちも知らない」
コイツらにしては粋で面白い発想だとは思うけれど、小銭が気になる。駄賃程度なのか?
開けたい衝動に駆られながら平静を装っていると、指揮者が、「僕たちも興味あるから、開けちゃったら?」
はい!おっしゃるとおりにいたします!
恐る恐るテーブルの上に中身をぶちまけた。
いちまんえんさつがいっぱいはいってる!
えええええええ!
指「金額決めずに集めたんだけど、結構はいってたねw」
もうボーゼンだ。オケは30人ちょい。そいつらからと関係者からとも言っていたな。
数えるのは後にしよう。急に周りの奴らが泥棒に見えてきた。
渡すもんか。所得税も払うもんか。これは私への寄付だ。
みんな拍手をしてくれている。
私の演奏の対価だ。指1本くらいくれてやってもいい。それほど嬉しかった。
単なるバイトではなく、私の演奏にお金を出してくれる人がいる事実がとても尊いものに思えた。
ピアノやっててよかったな。
てゆーか、お前らいつのまにか「ピアノのツンデレちゃん」ってもう言っちゃってますけどね。
正直ギャラは数万円もらえたらいいかな?くらいに考えていて、それなら使い道は明日の夜から犬を連れてパートナーの田舎に行く足しにでもしようと思っていた。
パートナーに犬たちを会わせたくて連れて行くのだが、長時間の運転は私も犬もキツイからフェリーで行くのだ。
ところが、今回のギャラは私の給料2ヶ月分もある。
あっさり使い道は決まった。それは近いうちに書くわ。
ただし私はクズなのだ。
雑にお金を使うのには自信がある。