私は寝つきが悪い。
まあ昔からと言えばそうなのだが、もともと寝つきが悪い上に、寝落ちする寸前(と思われる)の空創や妄想と、現実との境界線が曖昧になることが多くなってきた。
それの引き金となったのはおそらくパートナーの死だ。
少しずつ狂っていってるのかも知れない。単なる明晰夢で済む話でもなくなってきている気もする。
階下の生活音。息を引き取る数日前の独特な息づかい。ドアの向こうの気配。
さっきベッドに入ったはずのまんまで繰り広げられるそれらの現象は、ほんの数分で終わる時もあるし、数時間かけて終わる時もある。
どんな順番で繋がっているのかさえ分からない曖昧な断片だけが覚醒した後の記憶に残っているのだ。
主治医はそんな私に向精神薬(いわゆる睡眠導入剤)を処方してくれている。
「無理に寝なくていい。飲んで眠くなるまでスマホでもいじってろ」
主治医は冗談で「お前鬱だわ。紹介状書くぞ。」とか言うけれど、本気で精神科を勧めてくるようなことはしない。
主治医は基本的に精神科を信用していないようだ。私の性格上、ホントの事を付き合いの浅い人間なんかには話さないこともよく知っている主治医は、
「あんなインチキ臭え診療科もないわ。人の精神なんかに入り込めるもんか。お前に変な診断名なんかつけさせない。お前の話を聞くだけなら俺のほうが名医だ」などと普段から豪語している。
そりゃそうだ。
日常生活をほぼクズたちによって管理されている私には、精神科よりもクズたちとのぬるま湯のほうが特効薬なのかも知れない。
さて本題です。今日は書きたいことがいっぱいある。
さて、冒頭の流れからすると4あたりの話が適切だとは思うのだが、今日は朝っぱらから課長命令で中央オペ部にヘルプで行った話。
オペ部と言っても、私は医師ではないので手術に立合うわけでも執刀するわけでもない。外科医や看護師が手術で使用する機材や材料などをピッキング・点検する地味な作業部署だ。
いつもは某大手委託業者が仕切っているこの部署(私がシンデレラ予備軍に絶対という言葉を使ったのは、こういうカラクリがあるからなのだw)なのだが、私が派遣された理由。それは「現状見て改善してこい」の課長の雑な一言だった。
ホントに久しぶりにきたのだが、別に改善するような点は見当たらない。あえて言うとオペ部は私が来たことにより、ちょっと「ピリッとした」感じかな。
うーん。別に改善点ってないけどな。数年前に私が奉公に出されていた時とほとんど変わってない。
とりあえず作業を進める。
…これはひょっとして私がいた時と変わってないことが問題なのか?
医療の進歩は凄まじい。器具や機材なんかもどんどん改良され、症例が増える度に増えると思ってもらってもいい。
私がいた時は私自身が整理していたので、動線重視で器具なんかを配置していてとても使いやすかったハズなのだが、今はなぜかムダに動き回ってピッキング作業をしなくてはならない。
これじゃ、ちょこっとサボってコーヒー飲みに行けないじゃん。
コンマ数ミリ単位で揃っている莫大な手術器具とこんないる?と思うほどの薬剤を整理するのは、安く見積もっても数日はかかる。基本的に薬剤は私の一存では動かせないし、一人では物理的に不可能だ。
課長にラインを入れる。
私「辞退します」
課「ダメです。昼までに改善策を書面にしなさい」
ちょっとイラッとしたので、まずは落ち着くために、
コーヒーを飲みに1階へ行った。
コーヒーを飲みながらメモに書き出していく。
新しく導入された器具はカテゴリー別もクソもなく「◯年改定以降」みたいな雑な仕分けが施されている。
よくこれでやっていたな。感心するわ。
コーヒーを飲み終え、何点か改善策というか、半分命令みたいな感じでリミットをつけて責任者の某大手委託業者の男にメモを渡した。
え?なんですか?その迷惑そうな顔。
私だって来たくて来たわけじゃない。
私「文句あるならとりあえずコレが完了してから聞くわ。100歩譲って師長には私から言っておく。あと、ソ◯◯トにクレーム入れるのはまだやめておく。結果見てからな」
うわー。嫌な空気。全員敵だよ。
師長「アンタそれパワハラw まああの人たちにはいい薬になったんちゃう?」
私「それはよかった。私は毒にも薬にもなるらしいからな。誰が呼んだか知らないけれど、もうここには来ないから」
自分の部署に戻る途中で思った。
私を始めとするクズたちはお互いの効能を知ってるんだな。
特効薬は毒からでも生まれる。
うん、いい言葉だ。いつかクズたちに使ってやろう。
課「◯◯さん、まだ昼前ですけど?」
私「ああ、無事解決して師長に引き継いで来ましたから大丈夫だと思います。」
課「じゃあ、明日は会計システム見直してきてください」
私「…………。」
…私はしばらくあちこちで毒から薬を作ることになりそうだ。