龍という文字がある。
いかにもヤンチャ(だった)親が我が子の名前に使いたい文字である。
キラキラネーム全盛ちょい前のヤンチャだった親は、こぞってこの【龍】がつく名前を子に与えたものである。
昨日こんなことがありました。
交通事故の件で、警察から情報提供の依頼があった。
サボるのにうまい口実を見つけた私は、普段なら絶対しないような仕事を買って出た。
交通事故では健康保険は使えません。しかし、治療の途中で見つかった交通事故とは関係のない疾病には使えます。一応身分証明にもなるしね。なので、ウチでは基本的にすべての患者さんに保険証の提示をお願いしています。
その交通事故の当事者は20代半ばで、名前には【龍】という文字があった。ソイツは初診だったので、カルテを作るためデータを入力していた。
「ちょっとヤンチャな大工さん」
そんな香りがするヤツだった。
そしてなんとなくの予想は当たり、彼の健康保険は国民健康保険(国保)だった。
そしてふと、
あれ?なんかおかしくね?
診察券が出たけれど違和感があった。
ここは注意しないといけないとこだ。万が一、死亡してしまったとき、届けてある名前(漢字)が違うと、ドクターが死亡診断書を書いたとしても自治体で受理されない。
あ、間違えちゃった。
で済まされない事態になる。
なので、死亡診断書リーチのジジイやババアが救急車で運ばれてくると、かなり慎重に名前を確認する。ジジイやババアはPCで変換されない旧字体が使われていることも多いし、勝手に現代文字を使って記入されることも多い。
ウチの電子カルテでは、それらを外字として登録する。
「名前に変換出来ない文字が含まれてますよ。診断書類は気をつけてね」
という具合にドクターに分かるように登録をするのだ。
さて、【龍】の違和感。
保険証では第1画目が横棒じゃん。
立の下に月がくる龍じゃない。本人に確認する。
え?普通の龍ですけど。気にしたことなかった。そんな字あるの?
知らねえよ。こっちが聞きたい。
とりあえず本人がそう言うんだから、診察券はそうしたんだけれど気になって調べたら、
今の龍は、立の下に月がくるものではなく、いつからか平成◯年生まれの人から新字体「第1画目が横棒」を名前に使うようになったらしい。
そんなんPCにねえよ。
危なかったわ。ソイツが死んだらエラいことになるとこだった。
あと、【廣】という字も、中が黄色の黄という字のヤツもいる。これもPCで出てこないので外字登録だ。
慣れないと、けっこう見落としがちで、なかなか厄介な字だ。
そして私ごとなのだが、私は苗字に「西」が付くのだが、東西南北の「西」ではない。
4画目・5画目は、6画目に真っ直ぐ突っ切る「西」なのである。
通院先の病院(クズ主治医がいる病院)の診察券は【◯◯ニシ◯】
というなんともマヌケなものに仕上がっている。
最近はイロイロうるさくなってきたのか、通帳も三菱東京UFJ銀行以外は、すべてカタカナだったり、手書きだったりする。
免許や保険証(社会保険だけれど)は、いかにも作った文字で、他の文字とのバランスが非常に悪い。
好きでこんな字になったわけでもなく、長年東西南北の西だと思っていたのに、ある日からこんなわけの分からない字が私の名前にはあった。
自治体の方。龍もそうだけど、これになんか意味あるんですか?
長年書き慣れてきた、【龍】の字が今後どうなるのかは分かりませんが。
名前登録に気をつかう職場では、こーゆーのほんと困ります。