私は一応医療系の人なので、たまにはそれっぽい話を。
選定療養費。
今年の4月1日から、いわゆる大病院での紹介状なしによる突撃受診には税込5400円がかかることになった。ウチでは過去に受診歴があっても、最後の受診から1年経過で初診扱いとなるため、診察券を持って受付にきた患者さんには、
ええええええええ!
普通にびっくりされる。まあ当たり前だな。ウチでは、再診受付機経由(初診窓口へ行けと表示される)の初診窓口や救命センターの窓口でこういうことがよく起こる。
救急外来に電話による問い合わせ。
「あのー。5歳の子供がちょっとドアで指を挟んでしまってー。痛いって言ってるんで、これから行っても大丈夫ですか?」
「ウチに受診されたことありますか?」
「あります。」
「お調べいたしますので、お名前と生年月日を教えてください。…えーと、最終受歴が平成27年ですね。今年の4月1日より診療費の改定に伴いまして、紹介状をお持ちでない初診扱いとなる患者さまには選定療養費として治療費とは別に5400円をいただいております。」
「ええええええええ!いつから!?」
(だから4月1日からって言ってるだろ)
「ウチ母子なんだけど!?」
「母子家庭の患者さまも対象となっております。(ニュースくらい見ろよ。)」
「ちょっと待って!アンタほんとに痛いの?ゴニョゴニョ…じゃあいいです。」
「はい、お大事になさってください。」
5400円とこどもが天秤にかけられた瞬間だ。
こどもにはかわいそうだが、
こどもに使う5400円で、アレもコレもできる。
とか考えてしまうのだろう。計画性のない貧乏人が考えそうなことだ。
今までタダだからといってツバでもつけときゃ治るような軽症でも、気軽に病院に来すぎたのだ。まあそんな甘い考えのやつらにはいい薬だろう。何も毎回5400円がかかると言ってるわけじゃない。1年経ったら年会費を払うコストコみたいなもんだ。
いや、ちょっと違うな。1年の間に1回でも受診したら、そこからまた1年はセーフという仕組みは、年1回の利用で翌年の年会費無料!そんなクレジットカードみたいなもんだな。
1年のうち、お前の美容院をほんの1回減らすだけでこどもが安心して暮らせるのだ。安いもんだとは思わないのだろうか。思わないんだろうね。
それでもホントに辛くて診てほしい患者さんは賢い選択をし、さほどでもない患者さんは少し様子を見て翌日かかりつけ医や街の専門クリニックに行く。選定療養費というだけのことはあるのだろう。一応ふるいにかけるという点では少しは機能しているのかも知れない。
それでもゴネるやつはいる。
- 知らんかった。
それはお前が悪い。
- 聞いてない。
ウソをつけ。受診前にちゃんと説明しておる。
- こんな貧乏人から金をとるんか?
貧乏かどうかは知らんがな。説明したとき承諾しただろ。お前ウソつきか。
- 誰が決めたんや。
国です。厚生労働省です。
- こどもがかわいそうやろ!
今まさにこどもと5400円を天秤にかけてるお前を見て育つこどもはホントにかわいそう。
こどもは大きくなって残ったキズなんかを見てこう思うのだろう。
あのとき親が5400円払っていればこのキズはもうちょっと薄くなったのかな。
大変な家庭があるのは分かる。でもな、国や自治体の制度を最大限に賢く利用するには、それ相応の義務を果たさないとダメだ。
普段は街のクリニックをかかりつけ医として利用して、クリニックでは対応できない症状の場合はクリニックで高度な医療や施設がある病院へ紹介状を書いてもらう。それが理想とする医療なのだ。ただ人間なので、いつ何が起こるか分からない。救急外来はそんな時に利用してほしい。こどもは特にな。もしもの保険的な意味合いで選定療養費月割450円ってそれほどの負担になるのか?タバコ1箱、ポテチ3袋、缶コーヒー3本程度だろ?こどもに圧をかけて我慢させるより、そっちのほうを我慢してほしいもんである。