眠れないし、ボチボチ医師会オケの本番も近いので(17日)ピアノの練習を飲みながらダラダラとしている。
飼い犬に噛まれた手(正確には左手第5指第2関節あたり)は少し腫れてはいるが、何もしていなければ痛みもそれほどない。ピアノは関節がちゃんと曲がってくれないので、まだちょっとキビシイが、本番ではちゃんとやるつもりだ。
お金が絡んでいるからね。
噛まれた指を見ていたら、およそ10年前に我が家へやって来たチビたちを思い出してしまった。
最初は1匹だけ飼うつもりだったのだが、石川県にお住いのブリーダーさんが「どちらにします?」と全然なめらかでない時代を感じさせるカクカクの動画を送ってきた。
どちらもすごく可愛かったのだが、私は男の子のほうを選んだ。
ブリーダーさんは「ありがとうございます。よければこの子もどうですか?最後の2匹で兄妹なんですよ。」
そうだな。私は仕事で家を空けている時間も長いし、1人だとどっちもちょっとかわいそうかな。
私は決断だけは早い。
私「はい。どっちの子も譲ってください」
最初のワクチンが済んだ生後50日のチビたちは仲良く我が家へやってきた。
12月23日。石川県から東京経由の空輸でチビたちは伊丹空港へと8時間の旅を経てやっと私はチビたちに会えた。私は車で伊丹空港まで迎えに行った。
チビたちはピクニックに行くようなプラスチックのバスケットに入れられていた。バスケットの底には使い捨てカイロが何枚か貼られていて、その上にちぎった新聞紙がばら撒かれていた。寒かったのか2匹はぴったり身を寄せ合っていた。
こんな雑なの?動物の空輸って。
車の暖房を最強にし、早く帰って抱きたい気持ちを押さえながらクリスマス前の渋滞した道をノロノロと走って帰った。
2匹は元気で賢く、トイレのしつけも数日で覚えてくれた。歯が生え始めた頃はガブガブ容赦なく噛まれてキズだらけになっていたが、次第にそれも甘噛みに変わった。
よく食べ、よく寝て、大きな病気もなく2匹はいつも一緒にいた。
ボストンテリアはフレンチブルドッグとよく勘違いされるが、ボストンテリアはかなり俊敏だ。フリスビー犬として飼っている人もいる。
時間があればドッグランで走り回らせていた。
本当に2匹揃って我が家へきてくれて良かった。バカみたいだが、私は事あるごとに「家へ来てよかった?」なんて犬たちに聞いている。
そんな彼らにも老いはやって来た。女の子のほうは2年ほど前から白内障を患った。犬の白内障は手術をしても視力が絶対回復する保証はなく、年齢的にも手術はかえってストレスになるとの獣医の判断で点眼などの治療を選んだ。今では両目ともにほぼ視力はないと思う。明らかに嗅覚と聴覚に頼っているのだが、家の配置は覚えているみたいで、ぶつかったり、落ちたりすることはない。階段にはリノベーションしたときに折りたためる柵を作ってある。
男の子のほうは一段飛ばしで登っていた階段も、今では「よいしょ、よいしょ」と登っている。この子はそれ以外はまだまだ元気だ。
昨年は私もパートナーも大変で、チビたちの世話をマスターに頼んだりして寂しい思いをさせていた。
犬たちにしてみれば、「ある日突然飼い主が消えて、1人は帰ってきたけど、もう1人は?」てな感じだろう。
パートナーが最後に願ったことは「犬たちに会いたい」だった。その願いは主治医や看護師が全力で協力してくれ、病院内の野外公園で叶えられた。病室の医療器具一式ごとベッドでそこまで移動したのだ。その3日後にパートナーは息をしているだけの状態になり、5日後に逝ってしまったのだが。
パートナーが病院で使っていたクッションを亡くなった夜に持って帰ってきたら、2匹ともその日はそのクッションの上から動かなかったのだ。確か夜中だったな。朝まで3人で何もせずリビングにいたと思う。
私は足の一部を無くしたばかりで、まだ車イスだった。その状態でこれからの犬たちとの生活に大きな不安を感じていた。
元ビッチな姉やマスター、そして他のクズたちがいなかったら私は犬たちと一緒にのたれ死んでいたかも知れない。
そして今。それほど愛情を注ぎ、クズたちのチカラも少し借りて、これから3人で生きていこうとしていた矢先…
私は飼い犬に手を噛まれたのだ。
くそっ!次噛みやがってみぃ!もうメシやんねえぞ!
この子たちが我が家へきてくれて本当によかったなと半分ボケた頭で思う午前2時。
歯磨いて寝よ。